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 太陽の恵み リキュール

富久長では瀬戸内の恵みである柑橘類を活かしたいと考え、清酒のほかにリキュールを製造しています。日本酒とは全く違った魅力あふれるリキュールは、発売より多くのお客様に親しまれております。

我々のリキュールにかける想いや姿勢などについてお話します。「富久長のリキュールが好きだ」と言ってくださるお客様はもちろん、「富久長の日本酒が好きなのであって、リキュールにはあまり興味がない・・・」という方にも読んでいただけましたら幸いです。


 リキュールの愉しみ
富久長のリキュールはベースのお酒に果汁を加えて味を調えたシンプルかつ飲み飽きのしないお酒です。むしろカクテルと呼んでしまってもよいかもしれず、愉しみ方も日本酒とは大いに異なります。
我々のリキュールに込めた想いや飲み方のご提案をお伝えすることで、リキュールの愉しみがもっと深く大きくなれば嬉しいです。
 我々の目指すリキュール
最近では酒蔵の作ったリキュールが数多く販売されていますが、今田酒造がリキュールに取り組み始めたのはかなり初期の段階でして、右に倣って他所の真似をした訳ではありません。
しかし梅酒がブームになっているときでもあり、どうしてもそのように受け止められてしまうのは仕方のないところです。

だからこそ、流行りに乗ったような商品設計だけはしないと心に決めていました。

真においしいものであれば、ブームが去ってからも必ず生き残るはず。物珍しさや目新しさで売れるのではなく、むしろそのあとで選ばれ残っていくようなリキュール。それはリキュールへの取り組みを始めたときからの大前提です。
ですからブームの梅酒は初めから一度も候補にあがっていません。

また、あくまでも本業は日本酒造りだということも忘れないよう心掛けています。
リキュールを製造するにあたって、どうしても日本酒と設備の取り合いになります。こうなったときに影響が出るのは間違いなく日本酒の方。なぜならリキュールの方がフレーバーがずっと強く、リキュールに日本酒の味が多少混ざってもそれほど大きな影響は与えませんが、逆に日本酒の中にリキュールが少しでも入ってしまうとすぐに分かってしまうからです。同様に繊細な日本酒造りの最盛期に香りの強いリキュールを詰めるというような事態も避けなくてはなりません。

そのため富久長のリキュールは、あくまでも日本酒の醸造に悪影響の出ない範囲で生産しています。正直なところ、他にもいろいろとやってみたいとは思っているのですが、将来的にそれが軌道に乗ったときに安定供給できないようではお客様に迷惑をかけてしまいますし、また日本酒としての富久長ファンにも申し訳ないことになってしまうでしょう。そういった事態を避けるために、自らの軸足がどこに乗っているかきちんと心に留めて、可能な範囲で生産するようにしています。

しかし量的に制限したとしても、質的な妥協は決してしません。それではリキュールを作る意味がなくなってしまいますから、高品質と独自性を求める姿勢だけは変わりません。広島産の素材を用いるのももちろんそのひとつですが、他にもお客様に見えないところで努力は欠かさないつもりです。

またベースとなる酒には、日本酒メーカーとしてやはり日本酒を使いたいところ。しかしリキュールとしての良さを日本酒がスポイルしてしまうとなれば、他のアルコールを用いることも辞さない覚悟で取り組んでいます。リキュールの世界は想像以上に深く、日本酒をベースとすることに捉われすぎてしまい最上のおいしさを逃してしまっては、お客様の信頼と期待を裏切ることになってしまうのです。

我々はおいしいもの、本物を作る。

これが目的です。「日本酒メーカーがリキュールも作っている」のではなく、「日本酒メーカーとして一流、リキュールメーカーとしても一流」になりたいのです。そのために日本酒の酒蔵であるメリットは活かし、デメリットは排除し、少しでもおいしく富久長にしか作りえないリキュールを製造していきたいと考えています。
 愉しみ方いろいろ
今田酒造が製造するこれらのお酒は税法上リキュール類に入るのですが、一般に売られているリキュール、有名なものですとコーヒーを基にしたカルーアやオレンジのコアントローなどとはかなり趣きが異なります。甘さも密度もこれらのものよりずっと低く、アルコール度に関しては8度程度にしてあります。ですから、リキュールグラスで舐めるように飲むものではなく、むしろ低アルコール酒、またはビールのように飲んでいただく商品です。
 
飲み方の一番のオススメはロックです。たっぷりしたグラスに氷を入れていただくと、爽やかにいくらでも入ってしまうという感じです。ただ、温度が下がるため香りは立ちにくいですし、甘さも感じにくくなります。少し冷えたくらいがおいしいので、氷の量はお好みで加減してください。
 
冬の寒い時期でしたら、お湯割りなどはいかがでしょう。温かくやわらかくやさしく、ホッとする飲み物となります。あまり薄めるとボディ感がなくなってしまいますが、いろいろなバランスをお試しください。
 
もちろんストレートもおいしいです。ストレートと呼ぶほどのアルコール度数ではありませんし、冷蔵庫でよく冷やしておいてそのままキュッと飲んでいただくのがよいかと思います。口当たりがよいのでついつい飲みすぎてしまいがちですが、それでもアルコールは6〜8度台とビールと同じか少し強いのでお気をつけください。
 
他にもソーダで割ったり、苦味がもう少し欲しければトニックウォーターで割ったりするのも楽しみの一つです。レモンやオレンジを輪切りにしてデコレーションすれば、ご自宅でも簡単にカクテル気分が楽しめます。いろいろと試して、オリジナルの飲み方を工夫してみてください。
 取扱いのご注意
富久長のリキュールは高品質の柑橘類をそのまま使っているため、どの商品も果汁成分が非常に多くなっております。ゆずを用いた製品には香り成分を多く含むオイルのリングが液面に浮かび、また他の柑橘類も繊維質や果皮果汁成分が沈殿・混濁・浮遊することがございます。これらはすべて本物の素材を用いている証ですので、よく混ぜてお召し上がりください。なおネーブル果汁におきましては沈殿部分に苦味成分が多めに含まれておりますので、お好みにより混ぜてください。

柑橘類はどれも日光に当たると退色し、また温度変化などにより香りや味も変化しやすいものです。光の当たる場所や高温を避け、保存は冷暗所にてお願いいたします。

リキュールは日本酒に比べアルコール度が低く、酵母などが入りますと瓶内で発酵する恐れがございます。特に酸味が少なく甘み成分が非常に多い『温州みかん酒』では特に注意が必要となります。開栓後は冷蔵庫などで保管の上、なるべくお早目にお召し上がり下さい。

特別な蜂蜜を用いた商品『海と太陽の檸檬』『純粋はちみつレモン』におきましては、光や高温により蜂蜜成分が褐色になります。このようになりましても品質には問題ございませんが、貴重な蜂蜜の持ち味をお楽しみいただきたいので、光や高温を避けて保存してくださいますようお願いします。
 リキュール製造への道
日本酒メーカーの今田酒造がリキュール製造を始めたとき、少なからず抵抗感がありました。精魂傾けて造った日本酒に果汁を加えるということが、何となく混ぜ物をするイメージがあったのです。しかしおいしいものであればきっとお客様から受け入れてもらえるはず。我々がリキュールに携わってきた変遷をお伝えします。
 平成18年に酒税法が変わる
富久長を醸す今田酒造本店は、もちろん清酒メーカーです。
リキュールを製造するには清酒製造免許の他にリキュールの製造免許が必要ですので、勝手にお酒をブレンドして新しい飲み物を造ることはできません。
 
蛇足ですが、日本酒でアルコール添加などといった言葉を聞かれることもあると思いますが、モロミを搾ってお酒として出来上がった純米酒にアルコールを添加することも認められていません。
純米酒に別の酒類を加えたことになるので、リキュール扱いになってしまうのですね。搾る前のモロミにアルコールを加えて最後の香りを引き出すのが本醸造・吟醸酒の考え方です。

話が脱線してしまいましたが、低アルコール商品への需要の高まりもあってか、リキュール免許を新たに取得して新商品を出す清酒メーカーも平成15年くらいにはチラホラ見かけるようになっていました。
今田酒造にもリキュール製造のお誘いがあり、検討段階ではあったのですが、なかなか主業の清酒製造との折り合いがつかず、実現には至っておりませんでした。

平成18年になり、状況が一変しました。酒税法が大幅に改正され、清酒をはじめとする酒類の分類がガラリと変わったのです。その中で最も大きな変革は、三倍増醸酒といういわゆる甘い普通酒が清酒の枠組みから外れ、リキュールや雑酒に入れられたことです。富久長ではこういった造りをした酒が一本もありませんでしたから、今までの商品が酒として売れなくなるような直接的な影響は皆無だったのですが、逆の意味での大きな影響を受けました。

清酒として製造・販売していたお酒がリキュールや雑酒としてしか売れなくなったのですから、リキュール免許を持っていなくてはこれまでのお酒を売ることができなくなってしまいます。清酒メーカーは大半が清酒免許しか持っていませんから、それでは大変です。そこで便宜的に、これまでの清酒製造免許にはリキュールや雑酒の免許も限定的に含まれるようになったのです。

実を申しますと、富久長ではこの改正の前からリキュール免許を取得すべく書類を揃えたりしていたのですが、そんな中での税制改正だったので、新たにリキュール免許を取得するのではなく、持っている(ことになった)リキュール免許の適用範囲を広げるだけでよくなりました。我々が造ろうとしているのは清酒に果汁などをブレンドしようというものだったので、新たに許された限定的な免許ではまだつくることができなかったのですが、大幅にハードルが下がったことは確かです。前年度から試験醸造を続けていたリキュール造りは一気に加速しました。
 まずゆずに注目
今田酒造がリキュールに取り組み始めた頃、焼酎のブームが一段落して新たに梅酒の人気が高まっていました。清酒メーカーでも梅酒を作って業績を伸ばしているところが多くあるようです。梅酒に限らず、日本酒をベースとしたリキュールというのはそれまでほとんど見られませんでしたから、清酒業界全体で大きな転換点だったと言えるかもしれません。
ただ広島では梅が採れるといった話も聞きませんでしたし、恐らく探せばあるのでしょうが、他に名産地がたくさんある梅を使う意義を見出せなかったので、蔵として梅酒に挑戦する選択肢は初めから除外しました。
 
そして梅酒と並んでブームだったのが、ゆずです。これはお酒に限ったことではなく、ゆずという柑橘そのものがブームになっていました。リキュールを試作するに当たって様々な柑橘類が候補に挙がったのですが、特にゆずに着目したのは、その鮮やかな色に落ち着いた香り、そして後に残る爽やかな苦味に魅力を感じたためです。特にブームになっていたから使ったのではなく、むしろそのせいで原料となるゆずの入手が難しく、現在でもその状況はあまり変わっていませんが、それでもゆずを使いたいと思わせる魅力があったのです。
 
富久長でリキュールを作る以上は、美味しいもの、本物でなくてはならないというのが大前提です。ゆずのブーム、リキュールのブームに乗っただけと思われるような商品は絶対に出すわけにいきません。そしてもう一つ、日本酒をベースにするのですから、他のハードリカーで作れるようなものでも意味がありません。どこかに日本酒らしいやわらかさが残っているようなリキュールに仕立てたかったのです。そのためにゆずは打って付けの柑橘のように思われました。
 純米ゆずレモンの完成
ゆずを用いて美味しいリキュールを、という考えはかたまりましたが、広島県は柑橘王国といえども、ゆずの生産はそのほとんどが高知県です。地産地消の考えから数少ない広島県産のゆずを使いたいと思っていたのですが、ゆずは収穫まで大変日数がかかる果樹ですし、数量的にも品質的にも難しい部分があるのが現状です。そこで、リキュールに取組み始めた当初は高知県産のゆずを数種ブレンドして用いていました。
 
現在は高知県の中でもゆず王国として知られる北川村の最高級ゆずを使っています。ゆず栽培発祥の地北川村のゆずは黄色が鮮やかで香りと甘みがあり苦味が適度で、飲用とするには間違いなく最高のもの。リキュールとしてこの上ない素材に出会った我々は「これでゆずのリキュールは完成できる」と確信しました。
 
北川村ホームページ

ゆずだけだと酸味が物足りないので、広島県特産のレモンを加えました。国産レモンは全国消費量の3%に過ぎない貴重品なのですが、そのほとんどは広島県で生産されているのです。
ただ本来柑橘類は果汁をそのまま用いるような商品には向いておらず、実はレモンはその中でも難しいものの一つなのですが、せっかくなので地元の産物を最大限活用するようにしています。

日本酒は富久長自慢の純米酒です。
我々としましては本醸造などのアルコール添加を罪悪視してはおりませんし、むしろその方が価格を抑えられるというメリットがあり、今後の試行錯誤によっては選択することも十分考えられます。
しかし今回のリキュールでお酒に求められるのは特に口当たりのやわらかさ。アルコールの添加は香りを引き出すことと味わいをシャープにするのが目的ですから、今回のリキュール製造にはそぐわない感があります。香りは酒よりも柑橘の香りが主となりますし、キリッとした感じを出すのにアルコールを加えたければ、リキュールなんですから最後の調合過程でアルコールを加えても同じでしょう。
ですから最初から純米酒で作ることは前提となっていました。「どうせベースにするんだし・・・」というような安易な発想で普通酒を使うなどという考えは初めから論外でした。実を言いますと、そもそも普通酒を造っていなかったのですけれども。

日本酒と果汁だけだと甘みが少ないので、自然の健康食品である蜂蜜を加えました。この甘さのバランスは難しく、多すぎるとジュースのようになってしまいますし、少ないと物足りません。もっと甘い方がいい、甘くない方がいい、様々なご意見をいただいきながら試作を繰り返しましたが、ロックにして甘みが残りスッキリと飲める、そして日本酒のやわらかさを蜂蜜がマスクしてしまわないようなバランスを目指しました。

こうして『富久長 純米ゆずレモン』が完成しました。
 果汁の持ち味への思い
富久長初のリキュールはおかげさまで好評を博し、人気商品として定着しました。自画自賛で恐縮ですが、自分たちで味見をして、本当においしいなと感じます。しかしここで別の不満と申しますか欲が出てきました。

ゆずもレモンも柑橘類ですので、その最大の持ち味は爽快感のはず。しかし、味わいの強い純米酒をベースにすることでドリンクとしてのおいしさを求めた結果、その反面柑橘の持つ鮮烈な印象が薄れてしまっているような気がしたのです。特に富久長で用いるのは全て最高品質の果汁ですから、その持ち味をもっとストレートに活かせるようなリキュールも欲しいな、と。

そこで、ベースをキレのある吟醸酒に変更し、果汁の使用量も増やして果実味を前面に押し出して『吟醸ゆめシトラス 柚子檸檬』を作りました。ほんのりとした甘みにとどめることで、『純米ゆずレモン』とは明らかに別の鮮烈なおいしさを表現できたと考えています。

ただ、純米酒を吟醸酒に変えても、やはり日本酒の持ち味が強く出ることに変わりありませんでした。そしてゆずとレモンのブレンドを変えてみたり他の果汁を用いてみたりといろいろ試行錯誤を進めていくうちに、ベースとしての日本酒の使い方が難しいということにだんだんと気づいてきました。
果汁によって、相性のよいものとわるいものがあったのです。

富久長という日本酒を造る蔵の誇りとして、ベースとしては日本酒を使いたい。
しかしリキュールを作るメーカーでもある以上、素材を活かすため最高の選択をしなくてはならない。

これは大きな葛藤でした。
しかし初めから醸造用アルコール(焼酎甲類やウォッカなどのスピリッツと同じようなもの)をベースに据えてしまうのは我慢ができません。

まずは日本酒と相性のよい果汁でおいしいリキュールを作ろう、そう考えました。
 新しい取り組み ネーブル
ゆずではない新たな柑橘のリキュールを提案したいと試行錯誤し、その第一弾として生まれたのが『純米ネーブルレモン』です。

いろいろある柑橘の中からネーブルを選んだ第一の理由は、果汁の取引をしている業者の方が「飲んで一番おいしいのは、なんといってもネーブル」と、ことあるごとに話してくれたからです。ネーブルって、食べますけれど、あまりジュースとして単独で飲むことはなかったですから、(どんな味だったかなぁ?)という感じではありました。
 
そこで早速サンプルを少量おねだりして試してみると、確かにおいしい!甘みが強くやさしい香りと言うんでしょうか?独特で個性が強いのに、とても馴染みやすいおいしさだったのです。ゆずもそうですが、多少個性の強い果汁の方が日本酒とのなじみがよいというのも決め手になりました。

またネーブル果汁は広島県産のものが手に入るというのもとても嬉しいことでした。広島県のネーブル生産量は日本一。全国生産量の4分の1くらいは広島で生まれているのです。
ゆずは美味しいのですがどうしても高知県産になってしまい、「広島の」地酒という印象が多少弱いのが気になっていましたので、これは嬉しかったですね。

産地は県内有数の柑橘生産地である瀬戸田。ネーブル自体は甘みが強く酸味があまりないので、味わいに芯を持たせるためにレモンを強めに利かせるのですが、そのレモンも瀬戸田もしくは大長という県内産地で、品質的にも保証されているといってもよいほど安心感があります。
 
ただ、ゆずとネーブルでは見た目似たような果汁なのですが、実際に使ってみるとかなり性格が違いました。
 
たとえばゆずは液面にたっぷりとオイルが浮きますがネーブルはほとんど浮きません。沈殿が非常に生じやすいのもひとつの難点です。
成分としては果汁と果皮中の天然繊維質が主なのでむしろ健康にはよいと思いますし、何よりもネーブルオレンジらしいオレンジ色が主にこの沈殿部分にあるため、取り除いてしまうと見た感じのネーブルらしさ失われてしまうのです。
しかし苦み成分もこの沈殿に多く含まれるため、たくさん残して振り混ぜて飲んでもらうようにすると、どうしても後味が重く苦くなってしまいます。

見た目をとるか味わいをとるか悩むところなのですが、苦みもネーブルの魅力のひとつですし、混ぜないことによる調整も多少は可能なので、「沈殿がオレンジ色だな」と分かる程度に調整しています。

※ 現在「純米ネーブルレモン酒」は製造しておらず、ネーブル果汁のみの「広島ネーブル酒」を販売しています。
なお、果汁の生産量が少ないため、売り切れとなる可能性がございます。 ※
 広島県産への愛着
せっかく広島の柑橘を活かそうと始めたリキュール作りです。『純米ゆずレモン』のゆずは仕方ないにしても、できることなら地元産のものを使いたいという想いは初めから強くありました。地元のものを地元で消費しましょうという地産地消の考え方という以前に、とにかく広島に愛着があるのです。「我が広島県にはこんな凄いものがあるんだ」と声を大にして外に訴えかけたい、そんな程度の愛郷心がリキュール作りの原動力となっているのかも知れません。

『純米ゆずレモン』では貴重な県内産レモンも使っているのですから、それならばレモンだけのリキュールをつくろうと考えました。とにかくレモンの品質を全面に押し出した素晴らしいものを。そのために果汁を惜しまず大胆にたくさん使うことに決定。もちろんコストは跳ね上がるのですが、鮮烈な香りと爽快な酸味を活かすことにしました。

その反面、レモンはスッキリとした印象を感じる果汁です。甘みやコクといった要素が弱く、うまく補ってやらなくてはおいしい飲み物にはなりません。

蜂蜜はその両方を併せ持ち、まさに絶好の組み合わせ。蜂蜜の業者さんに次第を話し、レモンのリキュールに最もよくあうものを教えてもらうと、「それならルーマニアのアカシア蜂蜜しかありませんね」とのこと。
非常に高価な蜂蜜で、それまで用いていたものと比べても数倍の値段がします。しかしサンプルを送ってもらい、味見をし、リキュールのサンプルを作ってみますと、これがまるで別物になってしまうのですね。レモンの香味が素晴らしく鮮烈なので、甘みとコクの余韻が深いアカシア蜂蜜との相乗効果でボディ感の強い味わいが生まれるのです。

蜂蜜の価格だけ見ると二の足を踏んでしまいそうになるのですが、超贅沢バージョンということで惜しげなく使い、できましたのが『海と太陽の檸檬』。蜂蜜は広島県ではありませんが、これはと思えるようなハイレベルなリキュールに仕上がったと自負しています。

そしてレモンの爽快さを強調した『純米さわやかレモン酒』も登場。こちらは蜂蜜をほんの少ししか使わず、酸味と香りを存分に楽しめるようにというコンセプトで作りました。他のシリーズと比べますと、甘みが少ないこともあって非常に酸っぱいリキュールになっていますが、「強烈な酸味のあとの爽やかさが心地よい」とコアなファンの支持を得ています。
 近所の”ほんもの”
広島県産の柑橘に愛着を持ってリキュール作りを進めていくうちに、ふと気づいたことがあります。我々にとって広島県とは、瀬戸内の風景であり、安芸津町の恵みなのだと。広島県には他にもいろいろと素敵な街や風景がたくさんあるのですが、今田酒造の人間が真っ先に思い浮かべるのは間違いなく蔵の近所のこと。普段から見慣れた町や島の柑橘の果樹なのです。

それならば、広島県の中でも安芸津産もしくはご近所に限定して素晴らしい素材を集めることはできないものでしょうか。
いろいろとあたってみますと、レモンが収穫され選果場へ集荷されるときには産地ごとに分かれているので、安芸津のものだけ選ることも可能とのこと。早速お願いをして出来る限り集めてもらいました。

レモン果汁はこれまでも使っていて、やはり蜂蜜との相性が抜群に良いことが分かっていました。しかしレモンの産地にこだわっておいて、蜂蜜は何でもよいというのでは中途半端です。そこで近所に養蜂家はいないものかと探してみた結果、安芸津町ではないものの、隣町の竹原市に尾崎養蜂場という生産者が非常に高い理想と信念を持って蜂蜜づくりをしていることが分かりました。

養蜂家の方々というのは花を求めて年中いたるところを動き回っており、連絡したときがちょうど最も忙しい時期だったのですが、何度も何度も電話をして我々の熱意を知っていただいた上で蜂蜜のサンプルをいくつか頂戴しました。
その瓶を開けたときの香り、圧倒的な滑らかさとコクに受けた衝撃は今でも忘れられません。花が違うことでこれほどにも味わいが違うのかということにも驚きました。安芸津産レモンとサンプルをいくつも試作しながら、「これは最高のリキュールになる」と胸躍ります。最終的に選んだ蜂蜜は「ミカン蜜」で、やはり柑橘のリキュールには柑橘の花から集めた蜜がよいのでしょうか。滑らかで深い味わいがありながらもサラリとしてしつこさがありません。価格的にも最も高い部類だったのですが、その味わいに惚れました。

ここまで素晴らしい素材を用いると、今度はベースとして使う日本酒の味わいが気になりました。レモンの香りと蜂蜜のコクを最大限活かすためには、いっそのこと日本酒ベースをやめて醸造用アルコールを使う方がよいのではないか。
正直なところ、日本酒メーカーの矜持として、全く日本酒を使わないリキュールを販売することにはかなりの抵抗がありました。しかしブレンドを変えて何度試してみても、醸造用アルコールだけをベースにしたピュアな味わいには敵いません。我々がお届けしたいのは「おいしいもの、ほんもの」です。日本酒を使わないという選択も勇気を持ってすべきではないか。

こうして貴重な原材料を融合させた『純粋はちみつレモン酒』が誕生しました。
醸造用アルコールをベースとしたことで、味わいもさることながら、価格を抑えて販売できるようになりました。地元の力量を世に知らしめたいという意味においても最良の選択をしたのではないかと考えています。
 新たな挑戦 温州みかん
富久長のリキュールもお客様に認知されるようになってきた頃、広島の得意先の酒屋さんから「温州みかんのリキュールを作ってくれないか?」との依頼がありました。これはある意味新たな挑戦です。なぜなら温州みかんはそれだけで十分に甘く、蜂蜜で甘みやコクを補う必要がないからです。恐らくはベースのお酒と果汁だけのブレンドとなることでしょう。

それならばまず最初にすべきことは美味しい果汁を探すこと。
ここでも広島県である強みが活きました。温州みかんの産地は全国にたくさんありますが広島県での栽培も盛んで、しかも様々な果実をいろいろな用途にあわせて搾る業者が広島県に集まっているため、良質の柑橘が数多く集まる土地柄なのです。

用いる温州みかんはもちろん広島産(昨今の気候変動により必要な量を確保できないことが多く、品質を吟味した他県産もしくは韓国産の果汁とブレンドすることがあります)。実際にみかんを丸ごと食べているような味わいに仕上げたかったので、皮を丁寧に剥いて搾ったストレート果汁を贅沢に使用しています。氷を入れたりソーダやお湯で割ったりという飲み方を想定して味をデザインし、口に含んだ瞬間「おいしい!」と感じていただけるようなトロリと濃厚な味わいとなりました。

ベースとしたのは果汁の鮮やかな甘みを活かすため醸造用アルコールをメインとし、味わいに深みを持たせるよう純米酒をプラス。リキュールというより温州みかんのデザートと呼ぶ方がふさわしい『温州みかん酒』が完成しました。
依頼してくださった酒屋さんもその出来に大いに満足してくださり、発売と同時に多くのファンを得て人気商品となっています。

 リキュールの果実
富久長のリキュールは広島という地域性を活かし、温州みかんやレモンなどの柑橘類を使用したものが主力です。特にレモンは質・量ともに全国のトップ。瀬戸内特有の気候が生んだ柑橘の数々は、まさに広島の香りと呼べるのではないでしょうか。その果汁をどのようにリキュールに仕立てるのかお伝えします。

 自前で搾る困難さ
搾ったばかりの安芸津産レモン。素晴らしい香りが周囲に立ち込めます。リキュールの素材として素晴らしい果実が採れる広島県。ならばその加工にも気を配って、自然界がくれた恵みを最大限引き出してやらなくてはなりません。日本酒と違って、素材の持ち味がストレートに出ますから、リキュール製造の核心部分はこの加工部分にかかってくると考えています。

では実際に、どう果汁を搾るのでしょうか。率直に申し上げて、今田酒造の蔵で搾るのは無理です。
広島県は柑橘の産地ですから、当然のごとく加工を専門とする企業も揃っていますので、その道のプロフェッショナルに搾ってもらうことにしています。

加工が大切だと申し上げておきながら、自前で搾れないというのでは話が違うと感じられるかも知れませんね。そこで「純粋はちみつレモン酒」のレモン加工の様子をご紹介しながら、プロにお任せする理由をお伝えしたいと思います。

 酒造りと柑橘の実りと
安芸津産のレモン。鮮やかなレモン色です。みかんやレモンの旬はいつでしょうか?温州みかんでは最も早い極早生のものでも9月末から、品種を変えながら12月いっぱいくらいまででしょうか。レモンは早い時期に収穫するグリーンレモンが11月か12月、あとは成熟の具合によって3月ごろまででしょう。しかもただ収穫できればよいというものではなく、時期によって果実の様子は変化していきますから、求める品質の果汁を得られる時期というのはさらに狭まることになります。

レモンですと、早い時期に収穫するグリーンレモンはその名の通り皮が緑色をしていて、若々しい新鮮な香りと味が楽しめますが、実が堅く皮も厚いので果汁が取れる量も少なくなります。この果汁がどれだけ搾れるか(歩留まり)というのは原料単価等にダイレクトに響きますので重要です。

徐々に黄色くなり熟れてくると搾り易くなってきますが、今度は酸が抜けてきます。「実が熟すと酸っぱい果実が甘くなる」と考えていただければ分かりやすいでしょう。果汁には甘みが大切ですが、レモンに求められるのは鮮烈な酸味と芳香であることが多く、実際我々の求める果汁もそういったものですから、あまり酸が抜け過ぎてもいけません。これはレモンに限らずゆずでも同じこと。甘いレモンやゆずは食べておいしくても、リキュールには合わないのです。

温州みかんでは甘みが求められるので、寝かせて酸を抜くことが逆に重要となってきますが、これも樹の枝につけたままだと苦味がでてきてしまうそうです。

果物は太陽の恵みですから、冬の一時期にまとめて収穫され、一気に加工しなくてはなりません。さもなくば求める品質は絶対に得られませんし、放っておいたら腐ってしまいます。ただでさえ冬場は多忙を極める酒造りの現場で、レモンやみかんを搾ることなど到底不可能です。従業員が何十人もいるような大きな蔵ならば可能なのかもしれませんが、4〜5人で米洗いから瓶詰めまで全てをまかなう今田酒造にとっては、現状では難しい相談です。

逆にいえば、果汁の加工を専門とする企業であれば、これらの収穫が集中する時期でも対応できるだけのキャパシティがあるということ。
「純粋はちみつレモン酒」に使うレモンは、地元の安芸津産レモンに限定して集荷したもの。時期的にはレモンがしっかり黄色くなって香りが充実していながら酸が抜ける前に搾ってもらうようにしています。

 高品質のための設備
レモンを搾るベルト式搾汁機。小型の機械なので手作業が多いです。人力で果実を搾ろうと思ったら大変です。レモンやゆずの皮は堅いですし、使用する量も大量になりますから、一個ずつ手で搾ろうとしてもそうたくさんできるものではありません。疲れてくると搾り加減も変わってしまいます。

富久長で使いたいのは、果皮の成分も適度に含んだ果汁。香り成分の多くが果皮に含まれるので、単に汁が得られればよいという訳にはいきません。こうした品質的な理由からも、果実を搾る専用の機械が必要なのです。

また果物の強烈な芳香は日本酒の香りよりもずっと強いですから、清酒造りのシーズンにはできるだけ取扱いたくないものです。そのうえ果実には酵母が多く存在していますから、清酒酵母で発酵させる日本酒メーカーにとっては、ある意味雑菌の巣のようなもの。これらのことを考えてみましても、日本酒と同時並行でみかんやレモンを搾るというのはかなり無謀な行為のように思われます。恐らく別に蔵を建てる必要性があるでしょう。

ベルトでレモンがつぶされて果汁を搾ります。これらの設備投資は実質的に不可能、といいますか、優秀な企業が周りにあるのですから、自前で全て揃えなくてもよいのではないかと感じます。

とはいえ、原料だけ渡して丸投げにする訳にはいきません。どのような果汁が欲しいのかを伝え、いつ頃収穫した原料をどのくらい搾るのか決めていきます。最終的には味です。搾汁の現場に立ち会って味見をし、香りや酸味、甘みなどのバランスを確かめます。

「純粋はちみつレモン酒」のレモンはベルト式の搾汁機で搾ります。ベルトで挟む圧力を高めれば歩留まりがよくたくさん果汁を得られますが、果皮の成分が多くなり苦味なども増えてしまい、品質の変化もしやすくなります。きつすぎずゆるすぎず、最良のバランスを見極めていかないと、最終的においしいリキュールはできません。こうして「味重視」で搾っていきますので、どうしても歩留まりが悪く贅沢な搾り方になってしまうのですが、おいしいリキュールを作るにはやむを得ないところですね。

 酒なら酒粕、レモンなら・・・
搾った残渣。果汁は搾れていますが皮はあまり傷ついてません。レモンでも温州みかんでも、果汁を搾れば当然残渣が出ます。つまりカスですね。日本酒でも酒粕という残渣が出ますが、酒粕は酒粕で利用方法があるので毎年残らず処分できています。
しかし果物のカスの処理法など全く分かりませんし、設備もありません。皮は皮として利用方法がありますが、我々では利用できる状態まで加工できないのです。ならば捨てるしかありませんが、捨てるのもタダではありません。最高の果実だったのに、設備がないばかりに廃棄するようでは勿体ないと思います。

我々が「純粋はちみつレモン酒」のレモン搾汁をお願いした工場では、今回の残渣は細かくしてから発酵させ、飼料などとして利用されるのだとか。ゆずの加工を行なう工場では皮を干して再利用していました。

残りカスの利用ひとつとっても、やはり餅は餅屋ですね。

 無添加だからこその管理
果汁を貯蔵する冷蔵庫。寒い!果汁を搾ってもそれで終わりではありません。果汁は搾ったまま、もちろん無添加ですから、放っておいたらすぐに変質してしまうので、加熱処理や冷凍処理をします。収穫された果実をすべてシーズン中に処理しなくてはならないので、ある意味当たり前ですね。
清酒メーカーも一応食品メーカーですから殺菌などの作業を行ないますが、酒の場合はアルコールに殺菌力があるので、果汁などを取り扱うよりずっと容易なのです。

逆にいえば、果汁を自前で搾ろうと思ったらそれだけの設備が必要になるということ。認可も受けなくてはなりません。やはり専門職の仕事ですね。

貯蔵ももちろん冷凍。マイナス18℃の巨大な冷凍庫の中で管理されています。非常に寒い!しかしここまでしないと果汁の品質は保たれないのです。